大学卒業後、都内百貨店に就職するも半年で退職。30代半ばからフリー。2014年から2022年までフィリピンとベトナムに滞在した後、現在帰国中。
保有資格:行政書士
退職代行を使う場合、弁護士、民間業者、労働組合(ユニオン)の3つから選ぶことになります。
皆さんはどこを使うかもう決めましたか?
この記事は次のような疑問を持つ人に向けて書かれています。
- 職場が辛すぎるので退職代行を使ってすぐやめたいけど、どこに頼めばいいのかわからない
- 弁護士に依頼すれば確実なのはわかるけど、料金が高そうで不安…
- 労働組合でも会社と交渉できるし、弁護士とそんなに変わらないのでは?
理由は2つあります。
弁護士と民間業者や労働組合(ユニオン)の間でこのような差が生じるのは、両者の法的な立場が違うからです。
弁護士は依頼者の「代理人」(身代わり)になれるので、退職手続きの全てをお任せにできます。
一方、民間業者や労働組合(ユニオン)は「代理人」にはなれません。
そのため民間業者や労働組合(ユニオン)に頼んだ場合は、依頼者が自分で対処しないといけないことも出てくるのです。
特に理由2は、弁護士と労働組合(ユニオン)の違いとして重要です。あまり知られていない両者の大事な違いを詳しく説明します。
この記事で退職代行選びのポイントをつかみ、気持ちよく会社とおさらばしましょう!
1、代理人として会社と交渉できるのは弁護士だけ
退職希望者の代理人として会社と交渉できるのは弁護士だけです。
また、会社に起こされた訴訟に対応できるのも弁護士だけです。
これは弁護士法72条で定められていることで、違反すれば非弁行為で捕まります。
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

たしかに会社と交渉するつもりがないなら、弁護士じゃなくてもよさそうですよね。
ただ、こちらに交渉するつもりはなくても、会社が要求や妨害をしてくることがあります。
ここでは3つのパターンを挙げます。
① 在職中のミスについて損害賠償請求してくるケース
1つ目は在職中のミスについて損害賠償請求をしてくるケースです。
「辞めるのは構わないけど、過去の君の失敗で生じた会社の損失は賠償してもらう」などと言ってくる場合です。
もちろんほとんどが言いがかりです。しかし裁判で争うとなると弁護士しか対応できません。
退職代行を使うケースでは相手もブラック企業であることが多く、こうした嫌がらせを想定しておく必要があります。
② 人手不足を理由に労働者を引き止めてくるケース
2つ目は、企業が労働者を引き止めようとして退職手続きを遅らせるなど、妨害をしてくるケースです。
今は人手不足が深刻なのでこのようなケースがとても多いです。
辞めさせたくない会社と一刻も早く辞めたい労働者。両者の間に対立が生じた場合、民間の退職代行業者がその間に入って解決を試みれば非弁行為になります。
そのため妨害にあった場合、弁護士に依頼した方が確実です。
③ 「弁護士じゃないと対応できない」と会社が難癖をつけてくるケース
3つ目は、「弁護士以外の退職代行には応じられない」とゴネたり、会社が顧問弁護士を立ててくるケースです。
こうなると民間の退職代行業者や労働組合は対処が難しくなります。
また会社が弁護士を立ててきた場合、こちらも弁護士に頼んで応戦するしかありません。
法律知識のない非弁業者が会社の弁護士と交渉するのは実務的に不可能です。また弁護士法違反の可能性が高まります。
民間の退職代行業者が会社の弁護士に対応できず、黙って逃げるトラブルも起きています。
高い費用を払ったのに会社の嫌がらせに対応できず、一から弁護士を探すとなれば二度手間です。
そうなれば精神的、経済的なダメージは大きいでしょう。こうした事態は何としても避けたいですよね。

民間の退職代行業者が会社と交渉できないのはわかった。でも労働組合は交渉できるんでしょ?だったら弁護士より労働組合の方が安くていいじゃん。
わかりました。その点について次の項目で説明しましょう。
2、弁護士なら全部お任せ!依頼者は交渉に出なくていい
「労働組合でも退職代行で会社と交渉できる」という情報はネットでもよく見かけます。
実際のところどうなのでしょうか?
結論を言うと、労働組合でも会社との交渉が可能で、弁護士法72条の非弁行為にはなりません。
これは令和4年5月24日の東京地裁の判決(事件番号:令和3年(ワ)第12587号)で認められています。

やっぱり!だったら弁護士に頼まなくてもいいよね?
労働組合の方が値段も安いし、十分でしょ?
確かに裁判所が認めているので、労働組合が会社と交渉しても法律的には問題ありません。
しかし労働組合の場合、注意するべき点が一つあるんです。
それは労働組合の交渉が「団体交渉」だということです。
団体交渉には労働組合から複数の人間が出席し、会社からは社内の担当者や社長、弁護士などが出席します。
ここで重要なのは、労働者本人も団体交渉に出席を求められることが多いという点です。

え、そうなの?
はい。
よく考えてください。
退職代行を使おうと思ったのは社長や上司と顔を合わせたくないからですよね?
それなのに、交渉の場で社長や上司と顔を合わせることになっては意味がないと思いませんか?
団体交渉への本人出席は義務ではありません。しかし、実際には労働者本人も同席を求められることがほとんどです。

交渉でもう1回社長や上司と顔を合わせるなんて、マジ無理っす。
団体交渉が1回で終わることはないので、何回も顔を合わせることになると思いますよ。

うわぁ…。
ここで冒頭でも述べた両者の法的立場の差が効いてきます。
弁護士は依頼人の代理人ですから全てをお任せにできます。会社との交渉も弁護士が全部やってくれます。
つまり弁護士に頼めば依頼者は交渉に出なくていいので、社長や上司と会わずに済むわけです。
一方、労働組合は代理人になれませんでしたよね。だから依頼者本人が団体交渉に出席したりと、面倒なことが生じるのです。
弁護士と労働組合の違いをわかっていただけたでしょうか?
ちなみに民間の退職代行業者は一切交渉できません。弁護士や労働組合とは違い、業者が交渉すれば非弁行為で違法となります。
3、退職代行サービスの料金相場
退職代行費用の相場は民間退職代行業者が2万円、労働組合(ユニオン)が3〜4万円、弁護士が5万円程度です。
民間退職代行業者の料金が安いのはできることが限られているからです。退職意思の伝達(連絡)しかできないから格安なのです。トラブルが一番多いのも民間退職代行業者だと覚えておいてください。
労働組合(ユニオン)は会社と団体交渉が可能なのに料金が安く見えるかもしれません。しかし、団体交渉で依頼者本人も出席を求められる点が大きなデメリットでしたよね。
こうなると最初から弁護士を選ぶのが退職成功への近道と言えます。
弁護士の場合、できることに制限がありません。全てをお任せにできるので、依頼者は会社と一切コンタクトせずに済みます。
あとは弁護士の料金相場5万円をどう考えるかですね。
民間退職代行業者や労働組合(ユニオン)の料金相場を見れば、弁護士の5万円が特別高いとは言えないと思います。
差額の2~3万円で確実な退職を買うと考えるのが吉です。
4、料金が良心的な弁護士おすすめ3選
弁護士による退職代行の基本料金は5万円が相場ですから、それ以下なら安いと言えます。
ただし未払い給与や残業代の請求、損害賠償請求への対応などはオプション料金になるのが普通です。
このことを踏まえて、料金が比較的良心的な退職代行の弁護士事務所を3つ紹介します。
5、まとめ(ポイントおさらい)
最後にポイントをおさらいします。
① 弁護士、労働組合、民間退職代行業者の違いまとめ
- 弁護士は代理人として会社と交渉できる。だから本人は交渉に出なくていい。
- 労働組合(ユニオン)も交渉できるが、本人も交渉に出る必要がある。
- 民間退職代行業者は交渉自体ができない。交渉すれば弁護士法違反となる。
- 料金は民間退職代行業者→労働組合(ユニオン)→弁護士の順に上がるが、信頼性や実務能力を考えると弁護士はコスパがいい。
- 特に弁護士と労働組合(ユニオン)の費用の差は小さい。
種別 | 退職意思伝達 | 会社との交渉 | 交渉への本人出席 | 料金相場 |
---|---|---|---|---|
弁護士 | ○ | ○ | 不要 | 5万円 |
労働組合(ユニオン) | ○ | ○ | 本人も出席 | 3〜4万円 |
民間退職代行業者 | ○ | ✕ | 交渉自体不可 | 2万円 |
② おすすめ退職代行弁護士3選 料金比較表
弁護士法人を3つ紹介しましたが、もう一度比較表にしておきます。上から基本料金が安い順に並んでいます。
弁護士法人名(サービス名) | 基本料金 | 初回無料相談 |
---|---|---|
弁護士法人あおば(退職110番) |
43,800円(税込) | ✕ |
弁護士法人みやび |
55,000円(税込) | ○ |
センチュリー法律事務所 | 71,500円(税込) | ○(30分) |
2段目の『弁護士法人みやび』と3段目の『センチュリー法律事務所』は初回相談が無料です。不安に思うことを無料で聞いて、自分と合いそうなら正式に頼むといいと思います。
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